中島保寿の古生物学研究室@東京都世田谷区

中島 保寿
古生物学者
進化生物学者
博士(理学)
研究上の興味
中生代の生態系の発達と衰退
恐竜や海竜はなぜ繁栄し、なぜ絶滅したのか?
現在の生態系はどのようにして形成されたのか?
絶滅した脊椎動物の生理・生態
巨大な恐竜や海竜は、何を食べ、
どうやって繁殖し、成長し、死んだのか?
2017.06. 19
日本最古の四足動物化石発見地
「唐島」にて
骨の謎
骨の化石は何を教えてくれるのか?
私たちはどのように骨を獲得したのか?
What's new
2020. 2. 10 宮城県気仙沼市の中生代初期の地層から、日本初の破砕型歯を持った海生爬虫類の化石を発見しました。
2019. 3. 19 中島研究室から4名の学部学生が卒業しました。
2019. 3. 14 和歌山県から魚食性恐竜スピノサウルス類の歯が発見され、この化石の研究に協力することになりました。
2019. 3. 25 恐竜産地として有名な岩手県の久慈層群玉川層から、淡水性のものとみられるサメやノコギリエイの化石を発見し、報告しました。
最新研究成果
宮城県気仙沼市の前期三畳紀(約2億5000万年前)の地層から、これまで国内では発見例のない、球状の歯をもった海生爬虫類の化石を発見し、報告しました。この特徴的な歯を使って貝類や甲殻類など硬い殻を持った生物を砕いて食べていたと推測されます。当時の海洋生態系は古生代末の大量絶滅からの回復期に当たり、この時期のアジア付近の大洋に多様な食性を持った爬虫類が共存していたことの直接証拠になるなど、きわめて重要な発見といえます。
(写真:大沢層から発見された海生爬虫類の化石に付随していた歯)

岩手県久慈市の地層から、白亜紀後期(約8000万年前)の淡水性とみられるサメ・エイの歯を発見し、報告しました。この地層(久慈層群玉川層)は恐竜が見つかっていることで有名で、河川で堆積したものと考えられています。淡水性のサメやエイは現在の生態系でも知られていますが、白亜紀にはこの仲間がどのように淡水に適応していたのかを理解する上で重要な発見です。
(写真:玉川層から発見された白亜紀のノコギリエイ目の吻棘)

本研究では、魚竜類の椎骨(背骨)に注目し、様々な魚竜の椎骨の縦・横断面を比較しました。その結果、魚竜の椎骨は一般的にスポンジ状で、三畳紀以降の進化を通じて密度は軽くなるよりもむしろ重くなっていました。これは海生動物としては例外的なことです。またウナギ型の体型をした魚竜類では、発生学的起源の異なる領域(軟骨性、膜性)ごとに密度がはっきり違うのに対し、マグロ型の魚竜類では骨内部の密度は全体に均一であることがわかりました。
(写真:様々な魚竜類の椎骨から作った骨組織薄片の偏光顕微鏡写真)

ドイツの約2.05億年前の地層から、中生代に繁栄した海の爬虫類である首長竜(プレシオサウルス類)の最古の化石を発見し、新属新種ラエティコサウルス・メルテンシと命名しました。本研究により初めて、首長竜がジュラ紀よりも前の三畳紀に登場し、三畳紀—ジュラ紀境界の大量絶滅を生き延びていた動かぬ証拠が得られました。さらに骨組織の特徴から、首長竜は三畳紀の時点で内温性を獲得しており、速く成長できたことがわかりました。
(写真:ラエティコサウルスの全身骨格)

スッポンは,現在世界中に分布している淡水性のカメの仲間です.福井県で新たに発見された化石の形と微細構造から,スッポンの仲間は約1億2000万年前(白亜紀前期)にはすでにアジアに生息していたことが証明されました.この後スッポンは超温室状態だった白亜紀の地球環境に後押しされ,北米やヨーロッパへと進出し,現在の淡水生態系を代表する生物としての地位の礎を築きました.
(写真:スッポンの骨だけにみられる合板状の微細構造)

北海道最北端にほど近い中川町の白亜紀後期の地層から,絶滅したサメ「スフェノダス」の歯の化石を発見しました.スフェノダスのT字型の歯は壊れやすく,今回のように完全な形で発見されるのは極めて稀なことです.今回の発見を踏まえ過去の記録をまとめると、このサメが中生代から高緯度の冷たい海域を好んでいたこと,約5000万年前の一時的な地球温暖化により絶滅したことがわかりました.
(写真:北海道で発見されたスフェノダスの歯の化石)

宮城県の前期三畳紀(約2億4700万年前)の地層から,日本で最も古い糞の化石が多数見つかりました.これらの糞は大型の遊泳動物のもので,中に魚類の骨などが含まれています.この時代は海洋生物種のうち約96%が死滅した史上最大の絶滅事変の直後の時代にあたりますが,糞の化石から推定される食物網は思いのほか複雑で,一度壊滅した生態系が急速に回復していったことがわかりました.
(写真:宮城県南三陸町で発見された大型動物の糞の化石)
